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1996/11/07〜12/26


書体に関心があるのは? 1996/12/26

 今年最後の書体ウォッチャーです。皆様にとって今年は、どんな年だったでしょうか?
 一年の終わりということで、この書体情報ページにどんな方達が訪れているのか調べてみました。

 3月末頃にこのホームページを開設し、4月18日に「書体ウォッチャー」が始まりました。しばらくは1日に10件程のアクセス数でしたが、夏ごろには30件ぐらいになり、現在は1日に40〜70件のアクセス数になっています(書体ではなく女体情報だったらアクセス数は2ケタぐらい増えるのですが…)。
 また、勤務先から当ページを見る方が多いらしく、土日や休日にはアクセス数が減る傾向があります。
 最近の200アクセス分の記録を調べたところ以下の数字になりました。

いつアクセスしているか?
 昼間(午前6時〜午後6時) …133(66.5%)
 夜間(午後6時〜午前6時) …67(33.5%)

使っているブラウザは?
 Netscape Navigator …158(79%)
 Internet Explorer …34(17%)
 その他 …8(4%)

Macintosh か Windowsマシンか? 
 Macintosh …105(50.25%)
 Windows …88(44%)
 その他 …7(3.5%)

 アクセス時間は、やはり勤務時間帯が多くなっていますね。

 使用ブラウザ比率は、世間の評判どうりだと思います。

 使用マシンでは、Macintoshからのアクセス数が半分をしめています。Macの市場出荷シェアは15%ぐらいの筈ですから、この数字は少し異常です。
 Macintoshユーザは、デザインや書体にとても関心があるという証しでしょうか?
 現状でのプロのDTP業界ではMacintoshが標準ですから、それが反映されているのでしょうか?
 やはりフォントビジネスはMacintoshユーザに力を注いだ方が良いのでしょうか?

 色々と考えてしまいました…が、サイバースペース・ジャパン(株)が実施しているWWW利用者調査アンケートの今年3月分の報告では、WWW利用者のWindowsシェアは51.5%だそうで、当ページのアクセス比率44%とそんなに差がない事が判りました。
 書体に関心がある人は、WindowsユーザよりMacintoshユーザの方が少しだけ多いようです。

 来年1月2日は休載させていただき、次回の「書体ウォッチャー」は9日を予定しています。皆様よいお年を!

 


カナの字形「ネ」について 1996/12/19

 今週はカタカナの「ネ」の字形です。
この文字の字源は「祢」らしく、偏の部分が独立して「ネ」になったそうですが、一画目が点なのか、縦棒なのか…。
 漢字の「しめすへん(ネへん)」は、国内の明朝体では縦棒で、毛筆系書体では一般的に斜めの点で一画目を表現しています。
 それではカタカナの「ネ」はどうなっているのでしょうか?

 明朝系書体の仮名文字は、漢字デザインとは違って、普通は毛筆のニュアンスで両仮名ともデザインされていますので、通常「ネ」の一画目は点でデザインされています。

 ではゴシック系書体の仮名文字では、どうなのでしょう? 写植の写研とモリサワのベーシックな書体を調べてみると、両者にはっきりした違いがあるのが解かりました。
 写研のゴシック書体は、すべて一画目は縦棒です。モリサワはすべてが点にデザインされています。
 こんなところにも写研書体とモリサワ書体のイメージの違う原因があるのかも知れません。
 あなたがいま使っている書体は→(ネ)
モリサワ系ですか? それとも写研系でしょうか?

 そして平成書体ではどうなっているのでしょう? 明朝体では普通に点、ゴシック体でも点、丸ゴシック体ではなぜか縦棒になっています。これは平成丸ゴシック体が写研によって制作された影響なのでしょうか?

 ちなみに、私のデザインしたゴシック系かな書体は「墨東」以外は、すべて縦棒です。
※写研のゴシック書体でも、古いゴシック体には点になっているものもあり、モリサワ書体でも新しく開発された「新ゴシック」などでは縦棒になっています。

 


第5回モリサワ賞受賞! 1996/12/12

 今年の8月末締めで募られた、第5回モリサワ賞国際タイプフェイスコンテストで、私の出品した書体「あさがを」が和文部門の金賞に決まりました。
 このコンテストの和文部門は、前回・前々回と最高賞作品が選ばれておらず、久しぶりの和文でのモリサワ賞書体が誕生したわけです。
 受賞書体のデザインコンセプトは、
欧文書体に感化されたデザインではなく、漢字や仮名文字を筆記する時の自然な形を尊重した、読みやすく、そして美しく情感のある本文用ゴシック書体
 というもので、伝統的な骨格とその上に被せたゴシック書体のエレメントの組み合わせが新鮮だったと思います。

 このデザインは、かなり前から研究していたもので、第3回(1990)にも同じコンセプトで出品しました。その時は選外になりましたが、かな文字部分は、のちに「墨東」として世に出しました。
 第4回(1993)にも同じようなコンセプトで見出し用に太くデザインした書体を出品しましたが、これも選外!
 今回は最後の望みを懸け、文字の骨格を全面的に改め出品したら、このような結果になりました。

 10年前の石井賞受賞書体では、明朝体デザインに対する私なりの考えを明示しましたが、今回のモリサワ賞受賞書体は、ゴシック体デザインに対する私の答えです。
 明朝体一辺倒の文芸物の文字組に、こんなゴシック体が使われてもイイと思うのですが…

 ここまで来るのに随分時間が掛かった書体ですが、これからフォントとして完成させ世に出るまで、また時間が必要になります。長い目で見ていてください。
 一見すると地味なこの書体を、数多くの出品書体の中から見つけだしてくれた審査員の方々と主催者のモリサワに感謝いたします。

●入賞作品展が来年催されます、入場無料です。

第5回モリサワ賞
国際タイプフェイス・コンテスト
入賞作品展

1月6日より2月25日(土・日・祝日は休館)
AM 11:00 〜 PM 7:00
モリサワ・タイポグラフィ・スペース
新宿区下宮比町2-27モリサワビル1F
TEL. 03-3267-1233

 


林隆男タイプフェイス論集 1996/12/05

 私が書体デザインを初めて意識したのは17歳の頃、勤め始めた印刷会社の写植見本帳でタイポス書体を見た時だ。
 それまで活版や写植の印刷用書体というのは明朝やゴシックの限られたものだけだったので、タイポスの新しいデザインがとてもショックだった。
 私はそのころ商業レタリングを勉強していたのだが、印刷用の写植や活版の文字もデザイナーの手で描かれていることを知り、将来こんな仕事もやってみたいと思うようになっていった。

 そのタイポスを、写植用書体としてうまくデビューさせたのは林隆男氏だと思う。
 それまで活字書体用に計画されていたタイポスだが、当時写真植字業に携わっていた氏が、グループ「タイポ」に積極的に加わったことで、写植書体用に方向転換し製品化され、大ヒットしたのだ。
 その後タイポスの影響で活字会社からも、新書体がいくつか発表されたが、それらの活字系新書体は活版の衰退とともに消えていってしまって今では見ることも出来ない。
 まぁ、写植書体のタイポスも最近は目にすることが少ないが…。

 タイポスの成功をきっかけに、氏は書体デザイン会社タイプバンクを設立し、本格的な書体デザインビジネスを日本に定着させるために活動してきた。
 残念ながら林氏は1994年に亡くなられたが、氏の書体デザインに関する啓蒙活動と主義主張の全てが、この論文集に詳しく掲載されていますので、興味のある方はぜひ一度読んで見てください。

書体を創る
林隆男タイプフェイス論集

著者 林隆男
発行 ジャストシステム
定価 1800円

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●文字に関連する入場無料の展覧会情報です。

畠山崇展・マヤ文字を撮る
Morisawa Man & Writing Series Maya

12/04〜12/25
東京・飯田橋 モリサワ・タイポグラフィ・スペース
AM 11:00 〜 PM 7:00 土・日・祝日は休館
TEL. 03-3267-1233

 


2バイトフォント作成ソフト 1996/11/28

 フォントを作成するソフトはMACの場合 Fontographerという有名なソフトが市販されており、MacとWindows 両方のPSフォント・ TrueType フォント、NeXT・Sun用のPSフォントなどの1バイトフォント(1セット255字以内)が、商用フォントと同じレベルで作成できる。

 しかし2バイトフォントを作成できる市販ソフトが見当たらない。
いや、あるにはあるのだ…、Fontographerを開発したALTSYS社が作ったROLLUPというソフトが…。数年前にSOFTWARE Tooが国内向けに発表したが、フルセットで600万円以上する!パソコンショップには絶対に置いていない。ウワサでは1個も売れていないらしい。

 最近ニフティサーブのDTPフォーラム内で手頃な価格のフォント作成ソフトが話題になっている。
 米国のPyrus North America という会社が開発したFontLab Composerというソフトだ。
 Type 1・TrueTypeまたはEPSフォーマットなどが読み込み可能(2バイトフォントも)で、もちろん全く新しいデザインのフォントもこのソフトで作成できるらしい。
 現在、WIN95、 WIN3.x、 WIN NT、 OS/2 用の英語版が販売されているようで、日本語、韓国語、中国語版を作成中。Mac用も作成中だそうです。

 私の立場から言えば、JIS第一・第二水準字種までを含んだ、自分がデザインした書体を、個人レベルで2バイトフォントにできれば、本格的に文章を組んでシュミレーションすることが容易になるので、ありがたい。
 また、JISで規定された字種や字体に不満のある人達は、自分達の納得がいくフォントセットを作ることも可能になる。

 前向きに考えれば朗報なのだが、皆が好き勝手に日本語フォントを作りだすと、中途半端なフォントが沢山出てきて混乱するかも知れない。もちろん閉じられた環境だけで使用するなら問題はないが…。
 あとは、市販フォントのデータを利用して改造フォントを作り、それを配付したり販売する人達が出てくることも心配だ。
 これは利用者のモラルに依存するしかない問題だが、フォントメーカーがそういう事をされないように、新たなプロテクトを施したりしたら…あぁ!

 Windows用のデモ版がダウンロードできますので、興味のある方は試してください。私はMac用の日本語版ができるまで待ちます…。

製品名 FontLab Composer
価 格 $799
開発元 Pyrus North America Ltd
    http://www.pyrus.com/composer.htm

 


2つの書体コンテスト 1996/11/21

 石井賞創作タイプフェイスコンテスト(写研が主催)とモリサワ賞国際タイプフェイスコンテスト(モリサワが主催)、2つの定期的に催されている書体コンテストを比較してみた。

 石井賞は2年に一度の開催、モリサワ賞は3年に一度だ(今年は両賞とも催された)。
 写植機メーカーとしては後発のリョービが1980年にアジアタイプオリンピアードという書体コンテストを催し、オリンピアードと名乗ったので4年に1回開催するかと期待したが、金賞作品が選出されず盛り上がらないまま1回きりで消滅してしまった。

 1回目の開催は、石井賞が1970年。モリサワ賞は1984年に写植発明60年を記念して始まった。
 石井賞は今年で15回目、3年に一度のモリサワ賞はまだ5回目だ。

 石井賞から製品としてデビューした書体は、ナール・スーボ・スーシャ・カソゴ・ボカッシィ・キッラミン・いまりゅう・今宋・オクギ・ウメールなどがあり、モリサワ賞には、武蔵野・コマース・タカハンド・陸隷書・欧体楷書などがある(欧文書体は省いた)。

 興味深いのは応募数だ(和文部門のみ)。今年の石井賞には143点、モリサワ賞は231点の未発表書体が出品された。
 歴史もあり、賞金も高い石井賞のほうが少ないのはなぜだろう?
 私の推測だが、コンテストの規約が大きく影響しているのだと思う。

まず出品体裁だが―――――――

●石井賞は、指定された176の文字を、写研が用意した書体デザイン用紙に描き、それをB1サイズのベニヤパネルに指定の寸法どおりに貼り込み、保護のため透明ビニールをかける。

●モリサワ賞は、指定された98の文字を、書式規定に合わせて組んだ A4サイズのシート4種類。

 石井賞の方は、指定の用紙に描かなければならず、パソコンでデザインした場合などはとてもツライ。B1ベニヤパネルというのも時代錯誤という気がする。実際にパネルにケント紙を貼るときに、水張りという技術も必要になる。そして176枚の文字を728×1030mmのパネル上に正確に貼るのも大変な作業だ。
 そういえば、このパネルを抱え大雪の中、写研へ出品に行ったことがあったが、あの時の書体はどうしたんだろう…。

 一方モリサワ賞は前回のコンテストからこの出品体裁になったのだが、まずA4サイズでいいのは助かる。作業・保存に場所をとらないし、出品も郵便で可能だ。しかし、文字を規定の11〜50mmのサイズで約 480 字分並べなくてはいけないので、拡大縮小や複写する何らかのマシンを利用しないと出品体裁を作れない。パソコンでデザインすることを前提に考えているようだ。

それでは、1位の賞金は―――――――

●石井賞   400万円
●モリサワ賞 300万円

これは石井賞の勝ち!

そして重要な権利関係は―――――――

●石井賞は1位〜3位までの入賞作品のすべての権利を写研が取得。
●モリサワ賞は入賞作品への優先交渉権を1年間モリサワが取得。

 この部分が出品数の差に大きく影響していると思う。
石井賞1〜10回までの1位受賞書体のうち3つの書体が、未だに製品化されていない。製品化された7書体のうち4書体は、写研に勤務する社員が受賞したものだ。外部のデザイナーが受賞した6作品の半分の3書体が写研に埋もれている。

 やはり書体は製品化され、世に出なければ話しにならない。
新しい書体デザインを発見し、世に出すのが書体コンテストではないのか。
 石井賞で発表し期待させておいて、いつまでたっても製品化しないのはもったいない。いらない書体なら放出したほうが世のためだ。
 その点、モリサワ賞の欲のない権利規定は絶賛に値する。
現実に、タカライン(ソフトウエアTooから発売)・じゃんけん(レトラセットから発売)などは、モリサワ賞で見い出された書体だが、モリサワが商品化しなかったので他社で製品化されたのだ。これらの書体はモリサワ賞に出品したからこそ、世に出られたことになる。

私自身も9回展で受賞してからは、石井賞には出品する意欲を無くしてしまった。

 


ロゴ日本 1996/11/14

 月に1回程、JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)から会報が送られてくる。その中にはデザイナーを購買対象とした商品のパンフレットやチラシも同封されているのだが、今回、ロゴタイプ用創作書体18「ロゴ日本」のチラシがあった。

 ポストスクリプト言語の普及で、デザインから製版・印刷までを一貫してデジタル制作できるようになり、古い体質のグラフィックデザインの世界にもかなりパソコン(Macintoshだが)が浸透している。
 そんなデザイナー達を対象に、この商品が企画されたのだろうが、なんとも中途半端に感じた。

●こんなに便利でいいの?!
●自由に変形できるオブジェクト形式で
 個性的に使えて便利。
●プロユースの高い精度。

とチラシには書いてあるが、精度はプロユースでも、かなだけの書体でこのデザインではちょっと使う気にならないし(私の場合)、データはイラストレーターファイルなので、そこから使いたい文字をコピーして自分で1文字ごとに並べなければならない。
 JAGDA会員ならば、この程度のレタリングならスイスイと描けそうな気もする。そしてデジタル・デザインの利点は、何度でも簡単にシュミレーションできることなのに、この方式では簡単に書体変更もできない。せめて1バイトのかなフォントにでもなっていれば、まだ使い道はあるのに。

 監修には、日本タイポグラフィ協会の結構著名な人の名前があるのだが…少し残念。
 
ロゴタイプ用創作書体18「ロゴ日本」
ひらかな11書体、カタカナ16書体
Macintosh用
字数:50音・濁音・約物・数字など
CD-ROM(MO、FD版もあり)
¥28000(消費税送料込)

発売元
アルファコーポレーション
〒106 東京都港区六本木4-3-11-223
電話  03-3405-5510

 


文字の星屑 1996/11/07

 今年10月、今田欣一さんが約20年間勤務した写研を退社した。
 彼は写研が主催する石井賞創作タイプフェイスコンテストで、過去に2回も最高賞を獲得した書体デザイナーだ。

 写研から発売されている、ボカッシイ・いまりゅう・艶・今宋などが彼がデザインした書体だが、写研はパソコン業界へ書体をひとつも提供していないので、これらの書体を知っている人は一部のプロだけだろう。
 フリーの書体デザイナーとなった今田さんだが、4年前に自費出版した「文字の星屑」がとても興味深い。
 彼の趣味・生い立ち・書体への興味・考え方・などが、わかりやすい文章で綴られている440ページの本だ。
 今田欣一というデザイナーが、普段何を考え、どのように書体デザインをしているかがよく解かる内容だった。

 書体デザイナー全てが、彼と同じ生活や行動・考え方をしているわけではないが、書体デザインに興味のある人は読んだら面白いかも知れない。
 まだ彼の手元に「文字の星屑」が何十部か残っているので、希望する方には頒布するそうです。
 
 いままで写研という組織の中でチームを組み書体制作をしていた彼が、これから一人でどのような書体をデザインし発表していくのかに、注目したいと思う。

●文字の星屑が欲しい方は…

頒布価格:
 ¥1,500
申込方法:
 E-mail(imada@amie.or.jp)で残部を確認の上、現金書留か郵便小為替で送金してください。到着しだい発送いたします(普通郵便で¥2,000分のテレフォンカードでも結構です)。

今田 欣一
埼玉県鶴ケ島市下新田184-9 〒350-02

 


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