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1997/10/02〜12/04


アドビ初のオリジナル和文書体が完成  1997/12/04

 12月1日、アドビシステムズ株式会社が「小塚明朝」6書体を発表した。
 これまでアドビは、62の欧文オリジナル書体を発表・保有していましたが、今回、和文でもオリジナル書体を保有することになったわけです。
 この書体の詳細はアドビのページに任せますが、少しだけここにも「小塚明朝」の情報を書きます。

●ポストスクリプト・フォント(CID)
●ファミリーは6ウエイト
●希望小売り価格
 1書体 49,000円(解像度制限なし)
 6書体パック 198,000円
 ATM用フォント(6書体) 72,000円
●発売時期  1998年1月下旬

 アドビのページには、この書体をデザインした小塚昌彦氏の対談などがあり興味深いのですが、書体見本が小さなサイズでたったの3行とは寂しいですね。
 既に多くのDTPユーザは明朝体書体を購入して使用しているわけで、それ以外に追加購入するだけの価値がある書体なのかを判断するには、材料が少なすぎます。
 この小塚明朝で組んだサンプルをPDF書類(各ウエイト最低数ページは見たいですよね?)にフォントデータごと埋め込み、ダウンロードさせてくれれば、ユーザ自身の出力環境で確認できるし、サンプルに使われたテキストを流用してユーザ保有書体との出力比較が容易になるのですが…。
 えっ日本語フォントはPDFに埋め込みができないって?本当はできるんでしょ?アドビさん。近いうちに日本語フォントの埋め込みが可能になるんでしょうから、先立ってやってくれないですかね。将来の書体組み見本は、PDF書類で配付するようになると思いますよ。

 基本的な印刷用書体として長いあいだ多くの人に親しまれ、その種類も多い明朝書体。その中で、アドビの「小塚明朝」はどのように普及していくのでしょうか? 写研出身のデザイナー達が作ったという「ヒラギノ明朝(大日本スクリーンが販売)」も、彼らが思った程には普及が進んでいないようだし、明朝体のデザインとそのフォントビジネスは、一筋繩ではいかないように私は感じています。

 


カナの字形「ホ」について 1997/11/27

 先週に続きカナの字形です。「ホ」の字源は「保」で、右下「木」の部分が選ばれています。
 タテ棒の下端のハネる・ハネないは、先週の「オ」の状況と殆ど変わりありません。
 左右の「点」は、最近のゴシック系かなデザインでは、文字を大きくみせるために、長くなる傾向があり、点とハライの区別がつかない形状になっています(先週のサンプル)。

 私が興味を持ったのは、左側の点の部分です。
ゴシック体ではサンプル上列のゴシック体の様に、ハライ型をしている書体が多いのですが、明朝体では殆どが、この部分を「点」で処理しています。
しかし左側の点が、ハライの形状をした明朝体も僅かに存在します。
 それは味岡伸太郎かなファミリーの小町・良寛・行成の3書体です。同じ味岡さんの手による書体でも、弘道軒や築地という確かな活字原本がある書体では、点になっています(サンプル)。
 また、タイプバンク社の明朝体ドットフォントも初期の頃は、この部分がハライ型をしていましたが、いつのまにか点に直ってますね(ということは点のほうが良いと判断したのか…)。


カナの字形「オ」について 1997/11/20

 今回は「オ」です。この文字の字源は「於」で、「方」の部分が現在の「オ」の形になったようです。
 普通、タテ棒の下端が毛筆系・明朝系の書体ではハネているのですが、ゴシック系の書体ではタテ棒の下端がハネているものと、ハネていないもの2種があります。
 大体、古典的なゴシック体ではハネていて、現代的なゴシック体ではハネていないようです。
 いつごろからゴシック系書体の「オ」のタテ棒のハネが無くなったのでしょうか? 仮名文字協会の発足(1920年)の頃から、オのハネが無いカタカナ専用書体がデザインされてはいますが、広く一般的に目にするようになったのはタイポスからだと、私は感じています。
 以後開発されたゴシック系新書体の殆どは、ナールやゴナのようにハネが無くなり、多くの新書体に影響を与えました。
 また「オ」のタテ棒のハネは「ホ」のタテ棒と連動(ホがハネていればオもハネる)している書体と、「ホ」はハネ無しで「オ」だけハネている書体の2系統があるようです(サンプル)。あなたの好きなゴシック系書体の「オとホ」はどんな形をしていますか?

 


書体デザインの改訂-2 1997/11/13

 今年の春先にPSフォントとして発売された、かな書体「タイポス」も実はデザインが改訂されている。タイポスが大流行した頃、愛用していた私から見れば「ちょっと雰囲気が変わったな」と感じてしまう…。人はなんて、わがままなのだろう。
 書体デザインの改訂に対する思いは、書体を創る側と使用する側とで、随分違うと思います。皆さんはどう捉えているのでしょう?
 
 自分がデザインした書体のなかで改訂が目立つのは、かな書体「NTLG」だ。元々の書体は1984年に写研ゴナ・ファミリー用のかな書体として自主販売した「タイプラボ・ゴシック」だった。
 その2年後、モリサワ用として発売された時に1回目の改訂をした。その時はユーザには気づかれない程度の微妙な修正だった。
 そして昨年Windows用TrueType、今年Macintosh用PSフォントとして発売されたバージョンでは、全面的にデザインの見直しを行ったので、初期の「タイプラボ・ゴシック」とは、あまりにも違うイメージの書体になってしまい「ニュー・タイプラボ・ゴシック(NTLG)」と書体名まで変更したのだった。

 画線の端を水平・垂直に処理することをテーマにデザインを始めた「タイプラボ・ゴシック」だが、10数年間で2回のデザイン改訂は少し恥ずかしい…その時々では自分なりにベストを尽くしているつもりなのだが。

 


漢字エディットキット体験! 1997/11/06

 先日エヌフォー・メディア研究所から、発売された漢字エディットキットを使い、日本語フォントを作ってみました(テストですのでJIS全文字を含めたものではなく、ひらがな・カタカナ・漢字は16区だけのアニト書体)。

●まずは、あたりまえですが1文字ごとのアウトラインデータが必要です。このキット内の「漢字デザイナー」というツールで作成できるのですが、私の場合は過去に作ってあったFontographerで作成したデータを利用しますので、この作業はパスしました。また、「漢字デザイナー」はIllustrator1.1のEPSデータを読み込むこともできます。
 1ファイル内の文字数や配列は、同梱されているスロット別コード表(JIS & ShiftJIS)やテンプレートファイルを参考にします。アニト書体のデータはJISの区ごとに作ってありましたので、そのまま利用できそうです。
 そして、書き上がったデータを1バイトのTrueTypeフォントデータにします。私の場合はFontographerから作成しました(ひらがな・カタカナ・16区の3個)。

●次に、作成したTrueTypeフォントデータ(JIS全文字なら数10個になる)を、「ロールアップツール」を使用して「バスデータ」という1個の中間ファイルにします。

●最後に「バスパッカー」というツールで、フォント名・フォントID・著作権表示などを決め、日本語TrueTypeフォントに仕上げます。

 作業が何段階かあるので、面倒と感じたかも知れませんが、文字データが完成していて、きちんと配列してあれば、それぞれの作業はあっという間でした(JIS全文字の場合は違うと思いますが)。マニュアルを見ながらの初めての作業だったので30分〜1時間ぐらいだったでしょうか?
 できあがったフォントは、普通のフォントのようにMacにインストールし問題なく使えました。ヒント情報が欠けたものしかできないと事前に聞いていましたが、製品として売られているフォントワークス社の「PSフォントのアニト」と「漢字エディットキットで作ったアニト」をレーザープリンタ(600dpi)で出力した場合、殆ど区別がつきませんでした。9・10ptあたりをルーペで拡大して見るとちょっと差がありましたが…
 思ったより良い結果でしたので両者をPhotshopで表示比較してみました。

●感想
 私はFontographerで文字アウトラインデータを作成しており、そのデータが利用できるので、作業は思ったより簡単だった。しかし配列テンプレートとコード表の縦横が違っているのは直して欲しい。さらに、テンプレートに全ての文字キャラクタを入れてあれば解かりやすいのだが…
 ヒント情報が含まれていないことと、ビットマップフォント、PSフォントを作成する機能を意図的に外してあるのが不満…ここまでできるなら、全部作らせてくれ〜。

●話は変わって、Fontographerだが、日本語版は海外版と較べると価格が異様に高い。
もちろん、他のDTP関連ソフトの様に2バイトの日本語を扱えるようにローカライズされているのなら納得いくのだが、Fontographerの日本語版は操作メニューとマニュアルが日本語になっているだけで、日本語フォントは作れないのだ。
 漢字エディットキットの「ロールアップツール」と「バスパッカー」が、Fontographerに含まれていれば、日本語フォントを作る最強のソフトウエアになると思うのだが…。

●そんな事を考えていたら、Fontographerの正規ユーザーを対象に漢字エディットキットを優待価格で販売するキャンペーンが始ったようだ。
 Fontographerユーザーに対して通常価格98,000円の同製品を優待価格の61,740円で販売するもの。申し込み期限は1997年12月19日(ちょっと短いな…)まで。申し込み用紙は、同社から取り寄せる。
エヌフォー・メディア研究所

 


フォントの談話室、オープンしました 1997/10/30

 先週の土曜日(10/25)に、書体に関する情報掲示板をオープンしました。書体ウォッチャーに直接ブックマークを付けて、毎週ここだけを見ている人は気づかなかったかな? 
 一応「フォントの談話室」と名付けましたが、このページを読んでくれている人達も書体をテーマに、気楽に情報交換して欲しいと思います。人が書いたモノを読んでるだけではツマラなくありません?グチを言ったり、自分の体験や意見を話して見ましょう!

 実は前から、このような掲示板を計画していたのですが、どうしても自分ではうまく設置できず、レンタルの掲示板を利用しています。ですから見た目も私の他のページと少し違うし(元のページにも戻りにくい)、アクセスカウンタも別々になっています。できたら直接「フォントの談話室」に行かないで、トップページに寄ってから、フォントの談話室に行くようにしてくれるとありがたいです(トップページには稀に臨時のニュースなども載せます)。

 1年半程前に、このWeb ページを始めた当時は1日に10〜15のアクセス数でしたが、現在では、月に2000〜2500ぐらいのアクセス数になっています。それらの方々が互いに、フォントに関する色々な情報を投稿することで、「フォントの談話室」が充実していきます。質問も多くなると思いますが、ノウハウをお持ちの方は、答えてやってください。本人に直接メールを出すことも出来ますが、できたらフォントの談話室内で応答してください。どんな些細なことでも、知らない人にとっては貴重な情報なのですから…。

 


DTPとフォントの将来 1997/10/23

 先日の「書体デザインの改訂」を読んでくれたマック出力ショップの方から、メールを貰った。
「デザインを改訂するのはデザインする側から考えれば当然かも知れないが、マックDTPのようなオープン環境において同じフォントで違う物があるのは組版崩れの発生、過去のデータの流用が効かず、いちいち確認したり作りなおし作業が必要で、末端の現場では大変な問題を引き起こしていることがある」
 という内容だった。特に平成書体などは、同じ名前で数社から発売されており、それぞれ欧文部分の文字幅が違っていたりするので、とても厄介らしい。

 上記のような問題も含め、現在のDTP出力におけるPSフォントの扱いはやはり不自然だと思う。
 社内に最終出力機まで揃えて、使用フォントを一括して管理していれば大した問題は起きないのだが、DTPに関わっている人達の多くは、印刷用の高品位な出力物を得るために外部の出力ショップを利用している。出力機まで保有できない制作現場では、せっかく自分が気にいって買ったフォントを使用して印刷物をデザインしても、その書体が出力ショップの出力機に搭載されていなかったら、デザインに忠実に出力できないのだ。文字部分をアウトライン化すれば出力はできるが、文字数が多いものはデータが大きくなるし、メーカーによっては文字のアウトライン化が出来ないフォントもある。

 こんな不便な状況でDTPがこのまま進んでいくとは、私は思わない。自分が使用したフォントが画面で見えたように出力できなければ、WYSIWYG (What You See is What You Get) なんて大ウソだ。

 人に聞いた話だが、沖縄の一部地域では端物の出力には、制作したデータを「Light Bridge」というPS-2対応のソフトリップで全てビットマップにラスタライズし、そのデータを各自が出力ショップに持ち込む、という方法が普及しているそうだ。大量の頁物をこの方法でやるわけにはいかないと思うが、フォントの有無やアプリケーションに関して何も気にせず確実にイメージどうりの出力ができる。記憶メディアや機器が安くなり、マシンが高速になった今、チョット変則的だが面白いやり方だと思う。

 しかし、本命はAdobe Acrobatの利用だろう。現在販売されている3.0Jでは、日本語フォントを埋め込んだPDF(Portable Document Format) 書類を作成できないが、Adobeが現在制作中のオリジナル日本語フォントが完成したときには、日本語フォントを特殊なフォント形式に変えて、書類に埋め込むことが可能になるだろう(アウトラインが得られないフォントは不可)。そうなれば自分が使用したフォントを全て埋め込んだPDF書類を、出力ショップに渡せばよいことになる。
 使用するOSや文字コードも関係なくなり、特殊な外字や自作のフォントなども自分のマシンの画面で見えたものは全て出力できるようになるだろう。そして、出力依頼票に使用したフォントを書き込んだり、あそこの出力ショップには、○○フォントはあったっけとか面倒な事を気にしなくてよくなる筈だ。
 
 出力機側にフォントをインストールする必要も無くなり(大量に速度を上げて処理したい場合は別)PSプリンタの価値も薄れていき、高品位出力機は階調表現印刷用の網点生成とか面付けする能力だけが問われるようになるかもしれない。
 値段の高い出力機用高品位フォントが売れなくなり、パソコンに搭載するフォントしか誰も買わなくなる。そんな世界がたぶん数年後にやってくる。

 


FONT WORLD EXPO '97 1997/10/16

 10月17日(金)〜11月9日(日)まで、18組の若手デザイナーが参加する「FONT WORLD EXPO」が、原宿のデジタローグ・ギャラリーで開催されますが、ミヤヂマタカフミ氏から、出品フォント名・作者プロフィール(アルファベット順)が送られてきましたので、以下に紹介します。
 また会場では、42書体のデジタルフォント(Macintosh用PostScript TYPE 1 形式)を収録したCD-ROM「フォント・パビリオン」 \6,800(税別)が販売されます。会場の詳しい情報はこちらで
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ACRYLIC 2081・アクリル2081
ミヤヂマタカフミ
〒201 東京都狛江市東和泉1-12-14#101
TEL+FAX 03-3430-6664
E-mail futa@digitalogue.co.jp
1971年長野県生まれ。桐生短期大学生活デザイン科卒。1995年、衣食住をテーマに、カタカナとアルファベットの新しいスタイルを提案する、リビングフォントシリーズ『レヂスターフォント』を発表。その後も1996年『ポリエステル2077』『プラスチック2053』、1997年『コンクリート2041』『シリコーン2014』などを発表する。
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Assembly-Five・アッセンブリィ
古賀 学(ペッパーショップ)
〒113東京都文京区本郷2-18-4
TEL+FAX 03-5689-0757
1972年佐世保市生まれ。1993年『ペッパーショップ』スタート。現在は修行のために山で仙人生活。1998年夏、開発中の必殺技を完成させ下山の予定。
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CANDY・キャンディ
大宮聡之(MOP DESIGN)
〒150 東京都渋谷区代官山町13-8 キャッスルM 513
TEL+FAX 03-3477-0977
E-mail mop@bignet.co.jp
グラフィックデザイナー。大学卒業後、デザイナーのアシスタントを経て1997年モップデザインをたち上げ現在に至る。WEBデザイン、CDジャケットなどのグラフィックを手がけている。最近ではラフォーレ5FのインターネットカフェのWEBデザインを担当している。http://www.bignet.co.jp/01prototype/
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Chibacity・チバシティー
Oxygen(後藤隆哉+小沼孝至)
250W 19st. #11-O, NewYork, NY 10011, USA (TG)
〒230 横浜市鶴見区鶴見中央3-22-23-1014 (TK)
FAX 1-212-243-8167 (TG)
TEL+FAX 045-504-7470 (TK)
E-mail takaya@interport.net (TG)
E-mail konuma@po.iijnet.or.jp (TK)
後藤隆哉 1968年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科及び、プラット・インスティチュート大学院卒。コーポレートデザインを専門とするデザイン会社『Taylor&Ives』勤務。ニューヨークを拠点にデザイナー兼ライターとして活躍中。マンハッタン在住。
小沼孝至 1964年生まれ。日本工学院専門学校グラフィックデザイン科卒。(株)細川デザイン事務所にて企業のCIデザインを多数手がけている。所属する(社)横浜ファッション協会による「横浜デザイン研究開発プロジェクト」のメンバーとしても活動中。
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Chopress-825683・チョップレス-825683
杉澤大輔(GIGACHOP)
〒153 東京都目黒区自由が丘2-18-6松風荘13号
TEL 03-3718-6202
1975年3月3日長野市生まれ。最近ブルー好き。
東北芸術工科大学グラフィックデザイン科卒。茶室や茶道具に興味があります。茶室が欲しいし、茶道具揃えたいし。茶室の周りには竹林、跳び石、門の前には打ち水を。飲むお茶はほうじ茶が一番良いのだけれど。正座しないでゆっくりしたい。
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ef 4000cc
宮坂 淳(parakeet design)
〒167 杉並区下井草1-23-2-320
TEL 03-3301-7464
E-mail mys@hito.eccosys.co.jp
グラフィックデザイナー、CMプランナー。1968年2月8日長野県諏訪市生まれ。1990年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。博報堂入社。1996年parakeet design結成。free font site ef (http://parakeet.cyrus.org/)開設
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Escape・エスケープ
佐藤琢也
〒201 東京都狛江市和泉本町3-3-8 203
TEL+FAX 03-3430-0488
E-mail satou@digitalogue.co.jp
1974年11月28日生まれ。1997年東北芸術工科大学グラフィックデザイン科卒。1996年TDC入選。1996年タイポグラフィ年間ベストワーク賞受賞。
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Exotica・エキゾチカ
ヨーヨーラランデーズ
〒150 渋谷区桜丘町11-5 高橋ビルディング201 フロプロ
TEL+FAX 03-5459-7253
E-mail yo-yo@gb3.so-net.ne.jp

 


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